当社の探偵事務所にも、探偵興信所の独立開業を目指している方や就職を希望している方から問合せがあります。
しかし、探偵業界がクローズドな世界であるため(仕方のないことなのですが)、探偵業界の現状をあまりにも知らなさすぎるという気がします。
そして、探偵は開業しやすく利益を出しやすい、という幻想を抱き、この業界の門を叩いては、厳しい現実を知って廃業していくという繰り返しです。
よって、探偵、興信所の現状を理解した上で、独立開業や就職のことを考えていただきたいと思います。
突然ですが、全国に探偵・興信所って何社ぐらいあると思われますか?
公表されている数値がないので、正確に把握することはできませんが、ざっと推測してみても、計算上では3万社はあるのではないかと思います。
探偵・興信業の届出窓口である大阪府庁の人権啓発室に、現在の届出数について確認してみたところ、約2,300社の届出があるとのことでした。(平成15年8月1日現在)
単純に上記の数値から、全国に占める大阪の商圏を8%と仮定した場合、2,300÷8×100=28,750社という図式が成り立ちます。
3万社が多いと見るか、少ないと見るか・・・はるかに多い数値だと考えています。
実際、開業してもそのほとんどが廃業していることを考慮すれば、理解できます。
よく企業では、社員を2:6:2(2割が優秀、6割が普通、2割がだめ)の割合で例えることが多くあります。
この割合は探偵・興信業にも当てはめることができます。但し、探偵・興信業の場合には、2割がなんとか開業している、6割が実態上廃業している、2割が実態的にも形式的にも廃業しているということなのですが。
つまり、3万社×20%=6,000社がなんとか開業しているということになります。
次に開業していると機能しているとは別問題です。これも2:6:2の割合に当てはめてみると、2割の1,200社がなんとか機能している、残りの8割は機能していないということになります。
次に機能していると利益を上げている(赤字になっていないという方が現実的かも知れませんが)のは、これまた別問題です。
企業数の収益割合として、一般的には2:8の原則(2割が全体の8割の売上げを上げているというもの)がよく使われますが、これは制度や環境が整備されている業界のことですので、探偵・興信業の場合には、どれだけ甘く見積もっても、1:9の割合だと思います。
つまり、全国で赤字になっていない探偵・興信業の数は、1,200社×10%=120社ということになります。
上記の数値はあくまでも推測でしかないのですが、妥当なラインではないかと考えています。これが探偵・興信所業界の現状です。
幻想を抱いたまま業界の門をたたき、開業し廃業していくのがほとんである、という現実を理解して頂きたいと思います。
次に探偵業界の展望について考えてみたいと思います。ここでは、一部新聞等にも取り上げられている探偵が資格制になるかどうかです。
この件に関して、他の探偵事務所の社長らとディスカッションをしたことがあります。その際の答えは「ノー」でした。
理由としては、大きく2つあります。1つは、資格制度の内容を検討する公的機関が探偵業界の実態を把握できないこと、またそのことにより、探偵を資格制にした場合の各種シミュレーションができず、問題があった時に改善策を講じることができないためです。
もう1つは、探偵という職業を資格制にするほど社会的に価値を見出さないと考えているからです。
結局のところは、資格制ではなくて、ペナルティの仕組みをきちんと構築する、ということにいきつくのではないかと推測しています。
現在は、業界的にトラブルがもみ消されてしまう仕組みになっています。例えば、依頼者が消費者生活センターに苦情を申告したとしても、その苦情は探偵の協会に回され、その協会の苦情相談員は、依頼者が被害を受けた会社とつながっているという図式です。
資格制ではなく、ペナルティの仕組みを構築するとは、悪徳探偵の実態でも触れたとおり、悪いことをすれば今後営業できない(もちろん名前をかえても)、といったごくごく当たり前の排除する仕組みのことです。
ただ、この業界に身をおくものとしては、上記のごくごく当たり前の仕組みでも出来上がれば、探偵業界の健全化につながりますので、それはそれとして喜ばしいことではあります。
まずは悪いことができない仕組み、悪いことをすれば淘汰される仕組みづくりが大切だと思います。このような環境が整備されていけば、業界もオープンなものとなり、需要が喚起され、少しは業界の展望も明るくなるのではないかと考えています。
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